広島のあすにゃん

広島のアスリアが、日々の備忘録を書きます。

ショートショートにハマってます(072まで)

禁じられた森

その森は、禁じられていた。
赤ずきんちゃんは、どうしてもそこを通って
おばあちゃんを見舞いに行かねばならなかった。

森を抜けようとすると、
狼が現れて言った。
「この先へ行っちゃダメだ。亡霊が出るよ」
赤ずきんちゃんは、好奇心をそそられて
森の奥へと足を踏み入れた。

するとそこにいたのは、青白い姿をした女の亡霊。
彼女は赤ずきんちゃんの身体を乗っ取り、
おばあちゃんを殺そうとする。

しかし、現れた猟師の持つ十字架によって
亡霊は退散した。

禁じられた森は、今でもドイツのどこかにあるという。

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スマホ免許

年寄り用のスマホが出て何年か経ったが、
スマホを扱えない年寄りはあとをたたなかった。
事態を重く見た政府は、スマホ免許という制度を導入。
これを持たない年寄りは、電話が出来ないように処置した。
もちろん不満は出たが、
免許試験のための教室は無料、
通話料も免許取得後は3年間無料ということで、
みんな納得した。

うちのじっちゃんも、スマホ免許のために
教室に通っている。
おなじ年寄りどうしで雑談に盛り上がり、
脳の活性化にも役立っている。

スマホ免許を取りさえすれば、
若者とも対等に話せるので、
文句を言っていた年寄りも、やがて
感謝するようになったのだった。

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未来のランキング

SDGSに貢献した人々のランキングを
国連が発表するようになったのは、
2035年のころからである。
地球資源は枯渇しつつあり、
環境などの諸問題を解決するために
個人単位でのヤル気を盛り上げるためだった。

各国国民が、ランキング上位をねらって
熾烈な戦いがはじまった。
他人の功績を横取りする者も現れたりして、
もう、たいへんな騒ぎである。

ゆるい感じでランキングにも参加しない国民からは、
国連のやり方を嫌う人もいる。
SNSなどでチャットをしあい、
SDGSの成果を自慢する者もいる。

各国の言葉でチャットをする。
コンピュータが翻訳してくれるテキストなのだが、
個性がたっぷり。
オバサンらしいセリフを吐く者、
ツッパリ青年、
アラブの石油王などなど……

いまではSDGSの成果もあがり、
地球は救われたが
チャットでの交流は終わっていない。
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   読書の悪いところ

 時間が取られることがあげられる。
1分間に読める文字数は、400~600文字程度だといわれている。
1時間読んでも、24,000〜36,000文字程度なので1冊読み切るには4時間以上はかかる計算。
目も疲れる。本を長時間直視すると、目に疲れが溜まってしまうかも。
もちろん読書は人生に役立つ知識を多く得られる。
知識を豊かにすれば、仕事やプライベートにも活かせるようになる。
しかし、読書で得た知識によって、行動しにくくなってしまうこともある。
 また、読書のデメリットとして運動不足になることが挙げられる。

メリット
語彙力や教養が身に付く
発想力や創造力が高まる
自分の価値観や行動の幅を広げるためにも、本を読むことをおすすめします。

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ラップの意外な使い方

スーパーに並んでいるナマモノは、
大抵、ラップでくるんである。
肉や魚、個別に売られている野菜などなど……
一個ウリのキュウリやニンジンに
ラップが必要だとはわたしには思えないが
スーパーでは、だいじに扱われている。

ある日、駅前の工事現場にさしかかった。
そのお店に飾ってある、カニの看板が
ビニールで覆われている。
ナマモノでもないのに、ラップでくるんでいるのだ。

わたしが注視していると、
カニの看板が取り外された。
代わりにラップでくるんだ
七福神の看板がつけられた。

この店がカレー屋になったのは
それからしばらくしてからのことだった。

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 美保の決意

 担任が、私に、山本くんへの夏休みの課題を、持って行くように言った。
例の、薄気味悪いニヤニヤ笑いを浮かべて。
山本くんの近所には、苺ちゃんがいたのに、なんで私が行かなきゃならないんだろう。

嫌で嫌でしかたなかった。
たんぼ道のそばを歩きながら、この宿題を捨てていこうかと何度も思った。

捨てていけば、担任がまた、ニヤニヤ笑いながら、私に課題を持って行かせるんだろう。
山本くんなんか、全然、なんとも思ってないって、担任に何度も言ったのに。

私は初夏の空を見あげた。
あの彼方へ飛んで行けたらどんなにいいだろう。
しかし私は人間だ。自由には飛べない。

負けるもんか!
山本くんのところへ行ったら、彼とおなじように、学校へは行かないって先生に電話してやろう。

その時になって先生が後悔したって、もう、遅いんだから。

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火星のスイカ

JRは、各地方にわかれて競争しているが、
JR西日本JR東日本をライバル視して
なにかというと、突っかかっていた。

JR東日本が、スタンプラリーをすれば
JR西日本は、スマホで駅チェックをする。
JR東日本が駅弁ランキングをすれば、
JR西日本キヨスク売り上げランキングを発表する……。

そして時は22世紀。
宇宙開発が進み、JRも火星で交通網を建設。
通勤・通学のためにひと肌ぬぐことになった。
JR西日本は、専用の電子カードICOCA
JR東日本に先立って発売した。
JR西日本は、勝利を確信した。

しかし、JR東日本は慌てず騒がず、
電子カードマネー発売記念として
果物を発売した。
題して、「火星のスイカ」。
先行予約で手に入れた人に
限定的に発売したので
JR東日本は一気に逆転、
売り上げランキングが1位になった。

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パラレルワールドの地球

愚かな生物兵器を放ったために、
ある惑星の住人たちは病気に感染してしまった。
ワクチンが開発され、
対処が急がれたが、
病気は克服できず、惑星の住人たちは絶滅したかに思われた。

住人たちは、最後の望みを託して
宇宙ロケットに自分たちの窮状を訴えるプレートを載せた。
宇宙人たちに救難信号を送ってみることにしたのだ。
もちろん、反対はあった。
弱みを見せれば、襲ってくる連中だっているだろうからだ。

その宇宙ロケット発射反対派のなかに、エヌくんがいた。
エヌくんは、自力で物事を解決するのが一番、と考え、
同僚に呼び掛けて強力なワクチンを開発。
住民たちに投与した。


その後、宇宙ロケットの救難信号で駆けつけた宇宙人たちは
気味悪がった。
 
そのワクチンは、遺伝子に関与するものだったので、
数世代のちに住人たちは突然変異して
化物になったのだ。

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空飛ぶ蛇

ずっと夢に見ていた人がいる。
狩衣を着て、顔は貴族的。
うっすらと薫る香のにおい。

娘は毎晩夢に出てくるこの人に
惚れるようになった。
しかし、その話を聞いた住職は、

「それは物の怪に違いない」

と思い、娘にタバコのヤニを持たせた。
物の怪は、タバコが嫌いだと聞いているからだ。

その夜も更けた頃、
またしても夢に狩衣の男が現れた。
しかし、タバコのヤニのため
近づくことが出来ない。

事情を聞いてみると、
蛇の間で病気が流行った。
娘は医者の子なので、
助けを求めたのである。

さっそく、病を治す研究がはじまった。
娘は男のために、夜も寝ずに薬草を煎じた。
その甲斐あって、
蛇は空を飛ぶほど恢復したという。

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おっちょこちょい株式会社

入社見習いに来たエイチくんに、
おっちょこちょい株式会社社長の
エヌ氏は、そっくり返っていった。

「アルバイトも、ある場合とない場合とがある」

あまりにキレイなギャグだったので、
エイチくんはマジメな顔でうなずき、
「それで、ぼくはなにをすれば?」
と問いかけた。

エヌ氏は、せっかくのギャグがウケなかったので
ガックリ来たが、
気を取り直して言った。

「待合室のソファに座って待っていたまえ」
エイチくんは、ソファに座って待つことにした。
その前を、美人さんがやってきた。
エイチくんに気づくと、なにか言いたそうな顔をして
少年の前をウロウロしている。

自分に気があるのだろうか?
エイチくんは、ドキドキした。
こまったことに、エイチくんには
彼女がシッカリいたのだった。

そう言って断ろうとしたとき、
美女は叫んだ。
「あなた、わたしの帽子を敷いて座ってるのよ!」

エイチくんが会社に雇われたのは、言うまでも無い。

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  誰も知らないカフェ

 究極のカフェを営んでいるというエス氏は、しかし、だれもそこに案内しようとはしなかった。だから、カフェのある場所は、誰も知らなかった。

秘密めかしたエス氏の動向をあやしんだアイ氏は、エス氏のあとをつけた。
エス氏は、森の中へと消えていった。
アイ氏はさらに、あとをつけた。

ふたりが森の奥に向かって歩いて行くと、行く手にボロい小屋が見えてきた。
薄明かりの中、そこだけスポットライトが、当たっているかのように輝いている。

見ると、小屋からなんと、妖精が出て来て踊り始めたではないか。
アイ氏は驚き、思わず前に出て言った。

エスさん、これは素晴らしい。
どんなトリックを使ってるんですか?」
悲鳴が上がり、小屋はすったもんだの大騒動になった。

その後、カフェは閉鎖され、アイ氏はエス氏にこっぴどく叱られた。


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 ごはん結婚式

時は宇宙開拓時代、異星人とはじめて結婚した女性は、相手が昆虫食だと言うことになじみがなかった。
自分はごはん党である。
ごはんはすごいのだとアピールをし始めた。

ごはんはすごいのよ、と披露宴の最中に、彼女は異星人をかきくどく。
披露宴は、ごはんと昆虫の両方が出ていた。
BGMには、小さな鐘が鳴らされて、異星人風の食事に対する感謝の念が示されている。

ごはんは、納豆にも合うし、キムチにも、海苔にも、ごま塩にも合う。
昆虫なんて、なんに合うというの。

説得されて異星人は、昆虫食を止めてごはん党になった。
しかし食事中に鐘を鳴らす習慣は、あらためなかったのだった。

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   嘉助ってだれ

 忍者たちの8割は、男である。もちろん、くノ一もいるが、
ほとんどが男であった。行動する時間も訓練も
ともにする時間が多い。
なので、当然、男同士で恋愛感情が
芽生えたりもする。

しかし佐助は、男には関心がなかった。
現代で言うところの、ストレートなのである。
言い寄ってくる助三郎や、
嘉助たちをかわしつつ、
訓練に励んでいた。

そんなある日、佐助は、くノ一のお由美さんと
恋愛関係になった。
お由美さんはマジメな佐助が
自分に対してあまり口説いてくれないので
お冠で言った。

「ねえ、嘉助ってだれ? どういう関係?」
佐助は参ってしまった。
「ただの忍者仲間だよ。おまえ、妬いてるのか?」
「なにさ、うちを放っておいて嘉助といちゃいちゃ。
 あいつはあんたの何なのさ?!」

 今日も佐助は、お由美さんの尻に敷かれている。
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  一億円の健康

 好きなモノを好きなだけ食べ
運動もめったにしない大富豪が
一億円で健康を買おうとしていた。

事の起こりは、テレビ局のダイエットバトル番組。
あなたにピッタリなダイエット法をお教えします、
と言う触れ込みで、放送を開始したら
視聴率がぐんぐん伸びる伸びる。
CM会社は大喜びだった。
そのCM会社を大富豪が買い取り、
自分ひとりのために健康番組を作れ、と
ディレクターに命令したのである。

しかし、努力しないダイエットなんて聞いたことがない。
断ることも出来ず、ディレクターは必死で考えた。
そして思いついた。

「これを食べれば、ダイエットできます」
差し出したのは、こんにゃく食品。
大富豪はそれをひと口食べて気に入り、
一億円でそれを買い込んだ。

飽きるまで食べて、かえって太ったそうである。

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ちいさなちいさな動物園

戦前、R電車の沿線に、ちいさなちいさな動物園があった。
そこにいるのは熊ぐらいなものであったが
幼児や子供たちは喜んで見に来ていた。

しかし戦争が始まり、食糧難が続くと
熊にやるエサにも事欠くことになった。
それどころか、熊を殺して食え、という人まで現れた。
熊肉は美味いというのだ。

それを聞いた少年は、こっそりちいさなちいさな動物園に忍び込む。
熊の檻に近づき、探し当てていたカギで開けて、
熊を逃がしてやったのだった。

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フシギ小学校

その山の奥には、小学校がある。
ただの小学校ではない。妖怪たちが
人間をおどかすための勉強をしている学校だ。

ろくろっ首は、ふつーの姿をしていながら
一般の世界に溶けこみ、
踏切や信号機でその正体をあらわす。
つまり、「首を長くして待っている」状態。
小学生の悲しさ、
首があまり長くならず、おどかすまでにはいかない。

ひとつ目小僧は、サングラスをかけている。
夜にもサングラスを外さないので、
子どもたちがあやしんで、取り囲んでいくと、
「ばあ」
ひとつ目小僧は、グラスを外す。
しかし、小学生の悲しさ、
似合わないサングラスを
いぶかしんだ大人から、
「パーティ・ジョークだ」
と言われてガックリ。

そんなこんなで小学校時代は終わっていく。
妖怪たちの修行は、まだまだ続くのだ。

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バナナを食い尽くしてやる

「ここのバナナを全部食い尽くしてやる」
「おい、この店はお客さんにそんなこと言うのか?」
「うっせーな、テメーは黙ってろ! 俺は今、そのガキと話をしてんだよ!」
「……あぁ? 俺が誰だか分かってんのか?」
「うるせぇ、テメェこそ何様のつもりだよ!?」
おっと、ここで喧嘩が始まりそうな気配です。
いや、もう始まってると言っても過言ではありませんね。
「なんだ?やるのか? やってもいいんだぞ?」
「上等じゃねぇかよ……」
ついに喧嘩が始まってしまいました。
このままだと、僕まで巻き込まれてしまいそうです。
とりあえず僕は、カウンターの裏に隠れてみます。
そして、様子を窺います。
すると……
ガッッ!!! バキッッ!! ドカッッ!!! ズバッッ!!! なんということでしょう。
あの屈強な男達が、全員地面に倒れています。
店のバナナが、こんなに人を強くするとは思いませんでした!


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ギョウザを売ろう!

ここは異世界と通じるお店。
ギョウザの売れ行きが芳しくないため、
店主は新しいギョウザのアイデア
店員から募集した。

「ニンニクましましなんてどうでしょう」
「ショウガの入ったギョウザとかは?」
どれもパッとしなかった。
 最初は売れるのだが、安定的に売れないのだ。

「ギョウザを立方体にすればいいのでは?」
ある店員が思いついた。
「小籠包(しょうろんぽー)のように
包みを小さくして、四角くしてみるのです」

試してみたら、それが異世界人にウケて
今では店は大繁盛になった。


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一億円の涙

 一億円の涙、と呼ばれるダイアモンドが盗まれた。
 盗んだのは怪盗X。名探偵は、その犯行を暴き、
 ダイアモンドを取り戻さねばならない。

 しかしダイアモンドを盗んだ怪盗Xは
 名探偵の恋人だった。
 自分の父親の持ちものだったダイアモンドを取り戻しただけだという。
 名探偵は恋人のために、
 その犯罪を封印する。

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火星の自己紹介

やあ、ぼく火星。英語では、戦いの神マーズの名前がついているよ。
明けの明星とも呼ばれている、地球とかなり似ている星なんだ。
重力は地球の0.8倍。砂ばかりだけど、昔は運河があって、
超古代文明が栄えていたんだよ。
そこに住んでいたトカゲ人たちを、
戦いを好む超生命体が滅ぼし、
運河は干上がってしまったんだ。
異星人には気をつけてね。

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人を食らい、暴力の限りをつくす鬼も、病気になるのです。
赤鬼の子どもも、重い病気になりました。
赤鬼は、人間の名医のところへ訪れ、
「子どもを助けろ、さもなくばおまえを食ってやる」
と脅したのでした。

名医は、慌てず騒がず、
「わたしを食ったら、ほかにきみたちを診てやる医者はいないぞ」
とさとし、子どものいる山奥へと訪れ、
子どもを助けてやりました。

赤鬼は、そのお礼にその村を襲うことをやめたのです。