広島のあすにゃん

広島のアスリアが、日々の備忘録を書きます。

ショートショートにハマってます(第050話まで)

雨雲缶詰

時代は24世紀。おれは信濃
山をトレッキングしていた。
一天にわかにかき曇り、
雨が降ってくる。

だが、おそれるには及ばない。
「この缶詰を開けると雨雲が吸い込まれます。
キャンプや登山、ハイキングなどのお供にどうぞ。
中で龍神が暴れるので、お祓いが必要です」

という取扱説明書を見ながら、
おれは缶詰のフタを開けた。

するとどうだろう。
缶詰の中に、雨が吸い込まれて行くではないか。

しかし唯一の計算違いだったことは、
帰ったら缶詰の中で龍神があばれたため
幼い娘が怯えて泣きわめき、
おれの心が雨模様になったことだった。
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ギャグ時計

おれの時計は、アラームが着いている。
そこまでは普通だ。アラームの着いた時計ぐらい、
誰だって持っているだろう。
だが、おれの時計はちょっと違う。
アラームが、ギャグになっているのだ。

朝七時。起床時間が近づくと、時計は言う。
「7時です。紅茶がこおっちゃった!」
「7時です。前髪が長くて、前がみえない」
「7時です。鬼はー外。お庭の外」
といった、どうでもいいダジャレを、
毎朝、言ってくるのである。

いつも楽しい気分で目が覚めるのだが、
ある朝、恋人を連れてうちに連れてきたとき、
恋人がそのギャグを聞いて眉を寄せた。

「なにこの寒いギャグ! こんなの聞いてウケるなんて
あんたもサイテーね!」
おれは彼女にフラれてしまったのだった。
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宇宙ステーション『かなたナイン』

宇宙ステーション『かなたナイン』。
ここには、アカナメ星の賭博ゲームや
酒を出すバーが用意されている。

その中でも、アカナメ星人はバーテンダーとして有能で、
政界のウラ事情
商売の駆け引きなどにも通じている。

かれが秘密を握っていると知り、
闇の組織ネチネチネットワーク(NNN)が
バーテンダーの命を狙い始めた。

バーの常連たちは
バーテンダーに近づけさせまいとした。

ところが、NNNの刺客コウモリ娘が
その妨害をはねのけてバーテンダーに迫ってくる

どんな攻撃も彼女には通用しない。
そうと知った常連のひとりが
バーテンダーに球を投げて、

「これは爆弾だ!」
と叫んだ。
バーテンダーはためらったが、彼女に球を投げつける。
すると、球は激しい光を放った。

コウモリ娘は退散した。
彼女にとって強烈な光は爆弾よりも恐ろしかったのだ。

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鬼のジュリエット

 ジュリエットという名の黒い犬がいた。
 犬小屋につながれている彼女は
 右目が見えない。なぜなら、
 ドーベルマンとタイマンを張って
 勝利したときの傷があるからだ。

 そのドーベルマン
 ヤクザの飼い犬だったのだが、
 ジュリエットはそのヤクザともやりあい、
 飼い主の配下にしてしまっていた。

 ジュリエットは鬼のような猛犬だ。
 ジュリエットの猛者ぶりは
 近所に知れ渡っていた。

 怖いものなしのジュリエットにも
 ひとつだけ、弱点があった。
 
 犬小屋につながれている彼女を見て、
 からかってくるヤツがいる。
 それは彼女のように黒い
 カラスだったのだった。
 
 カラスは散々、ジュリエットをいたぶると
 彼女の手の届かない空へと飛んでしまう。
 ジュリエットは悔しがったが、
 どうすることもできなかった。

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週刊バス

バスの利用客を増やそうと始めた観光客用の雑誌。
るるぶに対抗して作られた。
週に1度しか発刊されないため
観光客から飽きられて忘れられそうになっている。

「CMを打ちましょう」
ということで、テレビCMを始めた。
初期投資100万円でOKだそうだ。
社長はホクホクしながら朗報を待った。

しかし。
「最近の若者は、テレビより動画の方を見るみたいです」
営業が報告した。
動画のCMは、初期投資100万円では済まないという。
社長はガッカリして肩を落とした。

それを見た社長の娘は
発刊日にあわせてイメージキャラクターとして
テレビCMに出ることにした。

その可愛さと愛嬌で、
週刊バスの売り上げは伸び、
今ではバス観光客も増えている。

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青葉の笛

一ノ谷の戦いで討たれた最後の
平家の笛を源氏たちは探していた。
手練れの人間がその笛を吹くと
嵐を操ることが出来ると言う。

その笛を持つ惣太郎は
追われて山奥へ逃げ込み
盗賊達と混じって悪業三昧。

しかしあるとき、河原でみかけた
美しい舞姫に一目惚れ。
彼女のために笛を吹くことを決意する。

追っ手がかかるなか、惣太郎は
舞姫と共に源氏と戦う。
笛を吹く技量の無い惣太郎は
舞姫を奪わてしまう。

絶望の中、仙人に修行した惣太郎は
嵐を巻き起こす技量を獲得。
最後の笛が操る嵐の中
惣太郎は救い出した舞姫
固く抱き合うのであった。

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伝説のチャリンチャリン

チャリンチャリン効果音のある登場曲のバッターがいた。
代打だが、ホームラン率が高く、
監督からは頼りにされているバッターだ。

しかし定年を迎え、彼は代打を降ろされた。
コーチとして後進を指導することに。
しかし彼の打法は、
彼独自にしか通用しないので
後進はなかなか育たなかった。

その打法の秘密とはなにか。
後進のバッターは、伝説のバッターを問い詰めた。
「お願いだから、その打法の秘密を教えてください」
伝説のバッターは、弱ったように言った。

「うーん、マネしても意味ないと思うけど」
「なぜ?」
「だってチャリンチャリン音楽が僕を奮起させるんであって
君にはただの雑音だろ?」
「そんなことはありません! ぼくをパブロフの犬と思ってください!」

後進のバッターは
伝説のチャリンチャリンと呼ばれている。

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心電車

「この電車は、心電車です。
ひそかな願いが叶います」
アナウンスが響いた。
ぼくは乗り込んだ。

この電車に乗って行けば
長年会っていなかった恋人の咲帆に会える。
夕焼けが列車を染める。
列車は、ひたすら西へと向かう。

ひそやかに列車の中で待っていると
予想通り、咲帆が来た。
軽くウエーブのかかったショートボブの首に
マフラーをつけて。

ぼくは彼女に近づいて手を取った。
「咲帆」
生き別れになっていた。
やっと会えた。

ハッとして目を開いた。
夢だったのだ。
ぼくはじわりと熱いモノが、
まなじりにこみあげてくるのを
感じたのだった。

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まがったパーティ

「ねえ、キミ。なんで僕にそっけないの?
キミのためになんだってやってあげるのに」

 僕は、ジェーンにかき口説いた。
「キミにワインもバラも贈った。
シャンパンだって、部屋の飾り付け、
ダイヤの指輪や毛皮のコートだって。
なのにキミは毎晩遊び歩く
僕はどうしたらいいんだろう」

僕が言うと、彼女は笑って言った。
「パーティのどこが悪いの? 私はまだ若いのよ、
もし止めたかったなら、
まがったパーティでもやってみるのね」

僕は悪魔に魂を売って、パーティを曲げた。
つまり、見かけはゴージャス
中身は宇宙遊泳なパーティにしたのだ。

彼女は帰ってきたけれど
心はどこか寒い。
僕には彼女を愛するだけの
魂がないのだから。

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浮気なスーパーカー


日常を観察していると、細かいことが妄想のタネになる。
たとえば、セダンとスーパーカー
セダンは地道な主婦だが
スーパーカーは煌びやかで浮気な芸能人。
ふたりが結婚したら、どうなるんだろうか。

勝手に仲間を家に連れてきて
呑んだり騒いだりする夫に
妻が叫ぶ――「バカにしないでよ!」
……なんか、どこかで聞いたセリフ。

気分次第で妻を褒めたりけなしたり。
賭博したり、女を買ったり。
そうしているうちに、セダンの方も
防御策を講じ始める。
助手席を増やし始めたのだ。

つまり、こういうことだ。
セダンは、自分の隣にスーパーカーが座ってくれたら
浮気が終わると信じたのである。
どんどん増える助手席。
家だけでなく、道路やビル、
芸能人の事務所、

放送局から国会議事堂、

富士山の頂上にまでそれは達した。

スーパーカーが浮気を止めたのは言うまでもない。
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精密機械マッチングアプリ

人間と同じように、コンピュータにも相性がある。
せっかく用意した高性能な機器も
相性が悪いと接続してくれなかったりするのだ。
パソコンもおなじことだった。
パソコンを作る際の精密機械部品。
相性が悪いと、PCが動かない。

そこで、ネットの有志が
「精密機械マッチングアプリ
を開発した。
精密機械部品の相性をあらかじめ調べ、
相性のいいものをお報せしてくれる
優れもののアプリだ。
PCを自作して安く済ませようとする
マニアたちは、熱狂してアプリを歓迎した。


問題は。
そのアプリが、Windowsのみ対応で、
しかもOSは20からというところだった……

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道ばたで見かけたアレルギー

歩道橋下で地域ネコを見かけた。
ひとりの青年が、そのネコに
おやつをあげていた。
歩道橋の下には段ボール箱
毛布とカリカリの入ったエサ皿が用意されている。

ネコがこちらを向いた。
わたしはゾッとした。
悪徳ブリーダーとして、
わたしは売り物のネコに
ムリヤリ発情させ、
1年に4回も出産させた上に
首の骨を折ってやったのだ。

ネコがキラリと目を光らせる。
「にゃーお」
不気味な声だった。
わたしは足早に去ろうとした。

その時、ネコが襲いかかってきた!
わたしの全身に、じんましんが走る。
わたしはネコを叩きつぶした。
ネコは大嫌いだったのだ。

「助けてくれ! 虐待したのは謝る!」
口走ったとたん、青年が顔を向けた。

「ぼくは警官だ。動物愛護法違反でキミを逮捕する」
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猫の拾ってきた魔法


うちのタマは、ヘンなものを拾ってくる。
ゴキブリ、コウモリ、ハトの死骸。
空き缶、空き瓶、そしてなぜか
コロポックルまで拾ってきた。

しかもそのコロポックルは忍者の恰好をしており、
ネズミのシッポを生やしていた。

このちいさなちいさな忍者は、
あちこちに潜り込んでイタズラし放題。
あるときは、わたしの宿題ノートを
水でぐちょぐちょにしたし、

あるときは、隣のおじさんのカツラを持ってきて、
「戦利品だ」と自慢する。

「もー、やだっ。出てって!」
わたしがどなりつけると、コロポックル
おじさんの息子を連れてきてくれた。

息子は、わたしを見ると、
「前からキミのことが好きだったんだ」
と打ち明けてくれた。まさに魔法だった。

願いごとが叶ったのを見たコロポックル
ネズミのシッポを置いて
どこかに消えてしまったのだった。

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夢のギョウザ


2030年代、地球は空前の
食糧危機に見舞われていた。
食料となる牛や豚などを飼うスペースが足りず、
肉類は、のきなみ値上がりした。

当然、庶民にとってギョウザは夢。
中華料理店は、金持ちしか行けないのである。

しかし、あるとき、科学者が現れて
食糧危機を根本解決する
夢のギョウザを開発した。

中身は、なんと
コウロギ。
しかしこれがまた、結構イケる味なのである。

未来のギョウザはミミズではなく
コウロギであった。
遠い未来には、医療機関も発達して出生率も低下。
人口問題も自然と解決したという。
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未来の金持ち


未来には、宇宙開発が進んでいて
金持ちは、汚染された地球から脱出。
きれいな宇宙から地球を見下ろして
高みの見物としゃれこんでいた。

貧乏人たちは、そんな金持ちを
「ハイパー人類」と呼び、自分たちを支配する不当な連中として
敵視し、テロ活動に走った。

金持ちは、権力の限りを尽くし、残虐な拷問や尋問などで
貧乏人たちを苦しめたが

苦節50年、貧乏人たちは金持ちたちを天から引きずり下ろすことに
成功する。
犠牲者の数は多かったが
その後、協定が結ばれ、金持ちたちの財産は
貧乏人たちを救うことに使われるようになったのだった。
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  ピアノダウンロード

一家に一台、転送装置が存在する未来社会。
転送装置は、人間や物質を電子分離して、転送先で再構成する装置である。
エス氏は、その古いバージョンを持っていた。
そろそろ、バージョンアップの時期である。
しかし、おカネがないため、時代に取り残されていた。

エス氏はクラシック界のピアニストなので、
転送機をつかって愛用のピアノを移動させる。
しかし、ある公民館での演奏会で、
ピアノのデータをサーバーに移動させたとたん
ダウンロードできなくなった。

技師がやってきて、古いバージョンだったから、
公民館の転送機と相性が悪かったに違いない、と言う。
エス氏は、しかたなく、生活費をはたいてバージョンアップした。

いざ、ピアノのデータをダウンロードしたら、
なんとピアノがチェンバロになっていた。
公民館の転送機がさらに古いバージョンだったので、
ピアノのデータも古くなって保存されたらしい……

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 ニセ太郎の活躍

 鬼退治で宝物を持ってきた桃太郎を見た梅太郎は、
羨ましくてたまらなかった。
自分も鬼退治をしようと、キビ団子を持って鬼ガ島へ。

途中で、オオカミ、チンパンジー、カラスの子分を採用。
舟をこぎ出し、鬼ガ島へ乗り込んでいく。

ところが……。
サイレンが鳴り渡った。
「太郎注意報発令! 太郎注意報発令!」
鬼は今度は不意を突かれなかった。
梅太郎は逆に退治されてしまったのだった。

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LGBTQの悩みごと

身体と魂の性別が一致しないと感じ始めたのは、14歳の頃だった。
自分の身体は男の子だけれど、魂は女の子としか思えない。

スカートを履きたいし、お人形遊びもしたい。お化粧だってしたい。

男の子は、そんなことはしないんだと、ママは言うけれど
だったら男子ってなんなのか、って質問したら、答えてくれなかった。

ある時、私が道を歩いていると、ヤクザにからまれている女子を発見した。
私を見ると女子が、
「助けて!」
って叫ぶ――

私は、ヤクザから逃げかけたが、それでも、立ち向かっていった。
女子は私に言った。
「たくましいあなたが大好きよ」

人は見かけが9割という話である。

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 道で見かけた地球

 小学生が、道ばたを通りかかったとき、
作業服を着た男が話しかけてきた。
「そこのボク。道に地球が落ちてるよ」

小学生は立ち止まり、シゲシゲと男を見つめた。
ヒゲぼうぼうで、作業服もしわくちゃ。
労働者って感じはするが
宇宙人かもしれない。

少年は、用心深く男に近づいた。
地球は青かった……」
 頭の中を、ガガーリンの言葉がかすめる。
 青くて丸い地球は、人間なんかアリにも見えないほど巨大で、
 道に落ちているような存在ではないはずだ。
 この作業服の男は、
 どこか、イカれているのだろうか。

 少年が逃げ腰になると、男は電信柱を示した。
そこから垂れる一本の電線。
「ほらね、アースが横たわっている」
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全力で推したい酔っ払い

スタンダップコメディアンを目指す
風采のあがらない男がいた。
目はやぶにらみで、肌は荒れ気味。
全身からアルコールの匂いが漂っている。

ここは場末のバー。派手な化粧のママが
酔っ払いがやってくるのを見て、
――また来たか
と思っている。

酔っ払いは、店内を観察した。
いつ、どこで獲ったか判明しない
さまざまなトロフィー類が
棚に並んでいる。

ナマモノでもないのに
色紙がビニールに包まれている。

彼が注文する前に、ママが既に
ビールを注文する。

そういったことを、手帳にメモしていると
店の子が、酔っ払いに笑いかけて言った。

「がんばってくださいね」

酔っ払いは、テレビのお笑い番組に出て
有名になった。

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初めてのボーナス

初めてボーナスを貰った。
なにを買おうか?
OLの侑子になにをプレゼントしよう。

ライバルは大勢いる。
ぼくに注目して貰うには、
よほど特別なことをしなくては。

ダイヤモンドの指輪は給料の三ヶ月分。
ミンクの毛皮も、それくらい。
スーパーカーを買って
いっしょに中央フリーウエイを飛ばそうか。

夜空を見あげて考える。
その時、ネットニュースが入ってきた。
ぼくは決意した。

星の命名権を買って、侑子の名をつけた。
これであの子は、永遠に名前が残る。
侑子がこれを知ったら、
きっとぼくのものになる。

ぼくは空を見あげながら、
命名権をくれる研究所へと駆けて行った。