広島のあすにゃん

広島のアスリアが、日々の備忘録を書きます。

ショートショートにハマってます(第028話まで)

    復讐のおと

「これは、700年前に死んだ邪悪な魔法使いが、
強大な鬼を呼びだすための
伝説のノートだ」

「鬼なんて、いるわけないでしょう」
エヌ氏は、嘲笑した。
「いや、これはホンモノだ」
おれは、真顔で答えた。
「そのノートに恨みを抱く相手の名前を書くと、
鬼がその人に、復讐してくれる」

おれは、それを取りだした。ページには、ビッシリ名前が書き込まれている。
「この最後の行に、あんたの名前を書いておいたぜ」
「ええっ?」
エヌ氏は、驚きながらノートを見つめた。

「あんたは妻を寝取った。鬼にお仕置きしてもらう」
「ちょっと待ってください――」

 ふっふっふ、とおれは笑った。
 扉がバタンと開いた。ツノの生えた邪悪な顔がのぞく。大きな手がエヌ氏にかかる。
「ぎゃああああ」
 バキッ、ボキッと骨の折れる音。
 おれは、ノートをかざして宣言した。
 「これがほんとの鬼のおと」

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ダイエットバトル
さあ視聴者のみなさん、お待ちかね
ダイエットバトルのお時間ですよ!
今日のお客さまは、総体重400㎏超え4人家族の
高村さんご一家と、加藤さんご一家です。

あらためて、このバトルをご説明いたします。
いまから2ヶ月以内に、総体重400㎏台のみなさんが
総体重100㎏台に落とすこと。
出来なかったチームは、出来たチームから
10万円の給料をさっ引かれます。

無理なダイエットをしないように
専門家のサポートもついており、
見届け人にはお笑い芸人と大食い優勝者を
招いています。

ダイエット法は、「ながら筋トレ」
「3分泣くだけダイエット」や
ラクに痩せる栄養士的レシピも大公開!

と、いう動画をネットでみかけた。
体重を気にしていたおれは、
ものすごく見たくなったので再生してみた。

「この動画は配信終了しました」
がーん。
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イラン人にプロポーズ

おれは、イラン人の彼女にプロポーズした。
イランは、厳格なイスラム国なので、
その教えに基づいた道徳教育が
徹底されており、
旅行者が犯罪に巻き込まれることはほとんどない。

チャドルを着た
イラン人の彼女、アーイシャは、
その中でもとくに親切で穏やかだった。

どこから来たのか聞かれて、日本からと言うと、
一気に満面の笑みで
Welcomeと言ってくれ、
お菓子やお茶をごちそうしてくれた。
おれは日本では、こんな歓待を受けたことがない。
性格が悪いと言われて嫌われている。

おれはイライラしながら、アーイシャの返事を待った。
どうなんだ。OKなのか、ダメなのか。

アーイシャは、しずかに目を開けた。
そして、親指を立てた。
「やった! OKだ!」
おれは、アーイシャに抱きついた。

が、アーイシャは身を振りほどいて叫んだ。
「バカ、これはFuck You! って意味よ!」
文化の違いって、きらいだ。

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代金として……

週に一度、どこからかメガネが届けられてくる。
動画CMで見た説明によると、
それをつけていると一週間だけ、
世界一のものが見えるという。

つけてみると、いろいろな世界一が見えてきた。
スマホの部品は、
日本の中小企業が作っているし、
自動販売機の普及率も世界一。
スーパーや百貨店に行けば
輸入牛肉が世界一。
タコの消費量も世界一。
なんと、世界一という名前の
リンゴもある。

そんな情報が、どんどん入ってきた。
わたしはとても誇りだった。

「今週でNo.1メガネの配達も終わります」
突然のことで残念だが、仕方ない。
同封の書類に何か書いてあったが、
気にしなかった。

メガネ越しに世界を見た。
突然、身体が重くなった。
視界が狭くなり、足がヨロヨロ……

慌てて書類を見ると、こう書いてあった。
「日本は世界一の長寿国。若さを代金としていただきます」

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食べられる消しゴム

この消しゴムうんこは、食べられるんです。
カレーのルーみたいに茶色くて、
見かけはちょっとエグいけど、
においはおいしそうでしょ。

ほら、よく嗅いでごらんなさい。
ウコンやガラムマサラなどの
スパイスの香りが漂ってくるでしょう。
ひとくち食べれば、1日分の
エネルギーチャージにもなるんです。

もちろん文房具としても使えます。
ノートに書いたボールペンの字も、
書類にしたためた印鑑の朱肉も、
これさえあれば、消すことが出来ます。

ただし、文房具として使った後は
よく洗ってくださいね。
消しゴムうんこについたインクは
有害なものがおおいのです。

お値段は、たったの50円。
ただし、3ヶ月以内に使い切ることができなかったら、
割増料金を、いただきます。

割増料金といっても、そんなにたいしたお金じゃありません。

あなたの、魂が欲しいのです。

ケケケケケケケケ……

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野武士恋愛事情

藤本誠道は戦が大好きだ。血わき肉おどる相手との戦闘がたまらない。
鉄のにおいと生臭い血しぶき、鼻がもげるような馬の体臭、汗のにおい。

しかし満月になると、藤本はなぜか山奥に行く。満月の藤本は、
武士ではなく、心優しい木こりとして、村人を助けているのだ。
木こりとしての藤本は、ケガをした動物にも
手を差し伸べるような人間だった。

その満月の木こりに、恋をした女がいた。
どこからともなくやってくる藤本の謎に魅せられ、
足元をじゃまする下草にもめげず、
女は木こりを追いかける。

朝日がさしこんでくる山奥で、木こりはもとの藤本に戻る。
「ええい、じゃまだ!」
藤本が、女を蹴倒そうとしたそのとき、

木こりとしての藤本が目を覚ました。
「おゆうさん!」

女と木こりは、戦場を逃げだし、遠く山の彼方へと駆け去った。

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ロボット殺人事件

ロボットに人権が認められてから数十年経った。
わたしはシャロキアン・ホルムズ。ロボットの探偵である。
今日の依頼は、警察では解決出来ていない殺人事件の
遺族からのものだった。

「わたしの父は、ロボット製作会社の社長でした」
遺族の佐知子さん(18歳)が、涙ながらに訴えた。
「ふだんから心臓が悪く、不整脈が出るのです。
 犯人は、それを知っていたのよ」

わたしは、調査を開始した。証拠はないが、犯人とみられる人物を
特定した。
犯人は、ロボットに職を奪われた佐知子の兄大地だった。

問い詰めると、大地は自白して言った。
「オヤジは自分でもロボットになっていた。
 ペースメーカーというロボット部品をつけているのが
 その証拠だ!」

 大地は、有罪判決を受けて無期懲役になった。
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暗黒の紙

「この財宝を、娘ビクトリアに……」
 そう言い残してパパは死んだ。

パパは、トレジャー・ハンターだ。
世界のあちこちを飛び回って、
古代遺跡からお宝をゲット。
大富豪や美術館などに
売りさばくのが仕事だった。

いつも怯えていた。
残忍な方法で殺された。

私は、ロボット名探偵シャロキアン・ホルムズに
助けを求めた。

彼は、こんな調査結果を出してくれた。

パパは古代文字の紙を見つけた。
財宝の在処だ。仲間3人で山分けすることになった。
しかしパパはその紙を奪い、
故郷のイギリスへ走ったのだ。

仲間は、私の家まで押しかけてきた。
逃げる私。
家の庭で追いつかれた。
財宝の在処さえ渡せば、命は助かると仲間は脅す。
私は、古代文字の書かれた紙を見つめた。
ヤケクソで池に投げ込んだ。

ボッ、と紙に火が点いた。
トルネードのよう……
仲間たちは、炎に巻かれたのだった。

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ものすごく強いアンドロイド

サラと言う名前のアンドロイドがいた。
反物質融合で動く身体を持っているので、
ものすごく、強い。

5トンもある鉄塊を持ち上げ、
マッハ10で走り、
難しい物理の計算も
ソッコーで答える。

科学者は、この出来栄えに
大満足した。
あまりに神がかって優秀なので、
部下のひとりが、
神棚に彼女を置くほどだった。

あるとき、部下のひとりが
サラの陽電子頭脳に
塩を掛けた。
「なにをする!」
科学者が、激高する。

部下は言った。
「お清めの塩が必要だと思いまして」
「サラダじゃないんだぞ! もし、機能不全になったら
どうしてくれる!」

科学者は、サラのスイッチを入れた。
「サラ、大丈夫か。1足す1は?」
 サラは、真顔で答えた。
「ハイ、答えを出すためアップロード更新をかけます。
終了まで3年……かも?」

 サラがジョークを言い出したのは、それが最初のことである。
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ノート争奪戦

あいつもこいつもクラス一の
品行方正、容姿端麗、成績優秀な
佳恋(かれん)のノートを
見たがっている。

佳恋の心友によれば、
非の打ち所がないノートで
これを見ればどんな厳しい試験も
パスするという。

今日の試験のレシピは
三ヶ月前に実習した、麻婆豆腐だ。
おれは、その時寝ていたので
レシピを写すのを忘れていた。

佳恋に近づいて、言った。
「きみのノートを見せてくれ」
佳恋は、眉を寄せた。
「試験の対策なら、別な人に」
学友が顔を出した。
「ああっ、遙人、抜け駆けするつもりだな?!」
「なんだと、おれは佳恋のノートの予約をしてたんだぞ」
 おれは学友とノートを取り合った。

「約束だろ、守ってくれよな」
佳恋の手から、奪い取ってノートを開く。

「わたしは授業を暗記してるの……」
佳恋は言った。
ノートは白紙だったのだ。
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昔むかし。ある大富豪の跡取り娘がいた。
彼女は、むかし結婚していたのだが
夫を亡くし、いままた新しい夫を
募集していた。

トメ吉は、その募集に応募した。
「わたしの夫に相応しいかどうか
激辛の試験を受けてもらいます」
跡取り娘は言った。

トメ吉は、食卓に激辛料理が並ぶのかと思った。
激辛料理は大好きだ。
だが、料理はふつーだった。

その夜、跡取り娘がこっそり墓に行くのを見て
トメ吉は、あとを追った。
娘は、夫の墓を開けると、
中身の骨をバリバリ食っている!

トメ吉は、腰を抜かした。
跡取り娘は、人食い鬼だったのか。

しかしトメ吉は、跡取り娘が去った後
その墓の中身をよく見たら

トウガラシだったのだった。

トメ吉もこのトウガラシ人骨を食べていたら
跡取り娘が、
「その胆力が気に入った」
と、トメ吉を婿にしたという。

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みんなでロープ

大きなロープが横たわっている。
その先に、なにがあるのか。
ひとりの少年が、引っぱってみた。

反応ナシ。

おばあさんがやってきて、少年の後ろについた。

「大きなカブが先についてるかも?!」

それを聞いて、おじいさんもおばあさんの後についた。

「大きなカブが先についてるに違いない!」

それを聞いて、警官もふたりの後についた。

「大きなカブが、手に入る!」

それを聞いて、コックさんが一同のあとについた。
「大きなカブで、料理しよう!」

それを聞いて、グルメレポーターが一同のあとについた。
「大きなカブ料理で、世界一周をレポートしよう!」

それを聞いて、ネズミが一同のあとについた。
「うんとこしょ、どっこいしょ!」

すぱーん!

ロープが引っこ抜かれた。

その先に、なぜか
ティラノサウルスがいて
一同をペロリと平らげた。
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イタズラ鬼と病気の美少女

マジメな鬼ばかりの住む山で、
イタズラばかりしている鬼がいた。
大将のおにぎりにワサビを入れたり
道に落とし穴を掘って鬼仲間を落としたりしていた。

やられっぱなしでいる鬼たちではない。
鬼の法律を作って、イタズラ鬼に言った。
「おまえには手を焼かせる。
人間を鬼にしたなら、許してやろう」

イタズラ鬼は、村へ降りた。
病気の美少女と巡り会った。
鬼の薬はツノから取るが
それを取ったら、命はない。

鬼は迷った。
自分の命と引き換えにするほど
美少女に惚れているわけではなかったからだ。

しかし、彼は決意した。
ツノを切り取るよう、少女の両親に命じる。
イタズラ鬼はツノを失った。

命の灯が消えていく。
そのとき、鬼の大将が現れて言った。
「おまえは成長した。
病人とともに命を助けてやる」

イタズラ鬼は、次期大将に選ばれて
いまは幸せに暮らしている。

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だんだん高くなる燻製

今日の燻製は、外国製の魚だよ。
安くて美味くて栄養価もたっぷり。
お子さまも喜ぶ味付けです。

と店の人が言うが
見ている内に、燻製の値段が
どんどん高くなっていく。

なぜだろう?
と思ったら
円安のせいだった。

わたしはすべての元凶である
ロシアの侵攻を
この手で食い止めることを決意した。

「シュワッチ!」
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その少年は、焼きそばキャプテンと呼ばれていた。
野球部のキャプテンだが、焼きそばが大好きで、
食べる度にひとこと、
グルメなコメントを言わないでは居られない。
店主は今日も、試作品「卵焼きそば」を彼に食べさせる。
「それじゃあ……いただきます」
以前食べた焼きそばとはまた違う新しさがあった。
口に運び……思わずほう、と息を漏らす。
卵の黄身と麺の柔らかさがあいまって、
非常にうまい。

「やっぱおやじの焼きそばは違うな」
少年が感想を漏らすと、
店主は頭を掻きながら言った。

「そのメニュー、じつは他の店から買ったんだ」

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一分草

食べると一分だけ、無敵になるという草を
科学者が発明した。

スパイがそれを嗅ぎつけて、科学者から奪い取った。
「この草だな! よし、食べてやる」
「あ、待て!」

スパイは食べた途端、苦しみだした。
「その草は、3分お湯に浸して戻さないと食べられないんだ……」
科学者は、逮捕されたスパイに気の毒そうに言ったのだった。

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しまうま下剋上

しまうまは、激怒した。
いくら自分が底辺階級の獣だからって、
自分の誇りにしている縞をバカにしていいって法はない。
しまうまは、ライオンたち猛獣を睨み付けた。
自分は食べられるかもしれない、
が、誇りを守って死ねるなら本望だ。

しまうまは、猛獣たちに立ち向かった。
ある時は、ひづめでライオンを蹴倒し
ある時は、その歯でトラに噛みつこうと思った。
が、もちろん草食動物の悲しさ、
ムリがあったのだ。

しまうまは、猛獣に囲まれた。
鋭い牙と血に飢えた目。
しまうまは、死を覚悟した。

と、その時。
しまうまの縞がするするっと抜けていき、
ひと束の黒い縄になった。

縄は猛獣たちを縛り付け、そのまま動物園へと
送ってしまった。

しまうまは、動物界での王者になった。

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No.1試験

「もしもしカメよ カメさんよ」

カメに負けたウサギは同じウサギ仲間から
村八分になってしまった。

そのウサギは、
ある日、鬼を発見した。

すぐそばに、鬼がいるのも知らず、
仲間のウサギたちは、草を食んでいる。
ウサギは叫んだ。

村のウサギたちが、驚いて耳を立てた。
「おまえらを食ってやる!」
鬼は、
ヨダレを垂らし、
凶暴な目をして、
ウサギたちに迫ってくる。

小さなウサギが転んでしまった。
鬼は、荒い息をして迫ってくる。
小さなウサギは、泣きそうになっている。
村八分のウサギは、
ついに見つけた。

くっつき虫と呼ばれる小さなトゲトゲ実。
それを、鬼のリーダーめがけて
投げつけたのだ。

リーダーの目を直撃するくっつき虫。
「痛い、痛い!」
鬼は退散した。

「きみこそNo.1だ!」
長老がそう言った。
村八分のウサギは、名誉挽回し
いまでは幸せに過している。
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甦る免許

 「待て!」
 オレは叫んだ。
 逃げ去る男、追うオレ。しかし男を取り押さえることができなかった。

 手がかりは、死んだ父が知っている。
 死霊使いを志したオレは、ある魔術師に弟子入りした。
 修行は厳しかった。ある時は、冷たい滝に打たれて気絶しそうになった。

長い修行生活の後、オレは免許皆伝の身となった。
オレは、父の死霊を復活させた。

復讐をしぶる父から、ムリヤリ犯人を聞きだした。
犯人は、父の商売が順風満帆なのをうらやんだ商売敵だった。
怒りに燃えたオレは駆けて行き、犯人の心臓に、ナイフを突き立てた。

犯人の知識を使って、
オレはやりたい放題をしたため、魔術師総会に見つかり、
死霊使い免停となった。

すると制御を失った犯人と
父が、激しいケンカになってしまった。
止めようとしたオレは、
自分が死霊となってしまったのだ。
いま、オレは二人の間に挟まれて
グチや悪口を聞かされている。


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失恋ってなんだろう

初めて恋をした。
無精髭、短い金髪、透んだ空のような青い瞳、
たくましい勇者さま。

彼は、あたしを助けに来てくれた。
あたしはこの国で人質にされていたんだ。
彼は、いともたやすく
見はりをノシて
あたしの手を取った。

そのときの手のぬくもりが
あたしのハートを射ぬいた。
だけど、国境近くになって
あたしは急に逃げるのがイヤになった。

逃げている間は、彼といられたのだ。
彼に守られ、彼の先導に従っていればよかった。

国境近くで立ち尽くすあたしを見て、
待ち合わせていた父が、呼び掛ける。
「ウィーナ! 走れ!」
彼も腕を取ってあたしをせかす。

あたしは、歩みを止めて彼を見あげた。
「行きたくない」
「このままつかまりたいのか?
今度は拷問だけじゃ、すまない!」

あたしは、彼の胸に飛び込んだ。
「このまま、ずっと逃げよう」

彼はそっとあたしを押しのけた。
あたしの恋は実らなかった。

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火星のスイカ

火星のスイカは 
水不足の火星にピッタリ。
水を必要とする農業などに、その底力を発揮。
このスイカにチューブをとりつけて、そこから水を汲めばOK。
所有者登録がされているので、
盗むとスイカが爆発する。

「これは、エグい」
ロボット探偵シャロキアン・ホームズは、
現場に飛び散った肉の塊と血液を見て、眉をひそめた。

「スイカを盗んだら爆発するぐらい、
この人だって知ってただろうに」
 きっと、殺害されたのだと思って
 ホルムズは、調査を開始した。

調査を開始すると、
被害者は病死が間近な老人。
彼は、病気で衰えて死ぬよりはと
火星のスイカを盗んだのだった。

遺族はそれを知って泣き崩れた。
肉片は、検査にまわされて
病気治療の資料になり
その病気は根絶されたのだった。

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寿司MD

寿司MDとは 
シブがきトリオの『寿司食いねえ』が入った音楽ディスク。
プレイヤーに載せるとその音楽とともに、寿司が目の前に転送されてくる。
その音楽が大音量なので
近所のエヌ氏は迷惑していた。

ある日、エヌ氏は、寿司MDをかける男の
殺害計画を実行。アリバイも完璧だった。
男は殺害され、事件は迷宮入りかと思われた。

ところが、ロボット探偵シャロキアン・ホルムズが
現れて言った。
「犯人は、エヌ氏です!」
 男を気絶させて棚の近くに移動させ、
 棚から頭に花瓶を落として殺したのだという。

その際、使われたのが、寿司MD。
気絶している男にこれをかけ、共鳴振動で
花瓶を落として、頭に叩きつけたのである。

男は逮捕された。
寿司MDは、犯罪に使われたことで有名になり
転送元は大儲けした。