広島のあすにゃん

広島のアスリアが、日々の備忘録を書きます。

ショートショートにハマってます(100まで)

 おじいちゃんピアノ

 そうさのう、わしが若い頃はピアノというものは
大変高価で、みんなの憧れの楽器じゃった。
わしを演奏していた友子ちゃんも、かなりの富豪でな。
ピアノを毎日弾きながら、童謡なんかを歌っておったものじゃ。

ところがある日のこと。
外でいきなり、ドーンという、すさまじい音がして、
窓ガラスが全部くだけちり、演奏をしていた友子ちゃんは、
ガラスまみれで死んでしもうた。

わしもまた、ガラスの破片を食らって、音もヘンになってしもうてなあ。

その後、調律師の兄さんがやってきて、わしの音を調律し、わしに名前をつけてくれたんじゃ。

わしは、ノーベル平和賞の舞台にも出されたほど、有名になった。
わしの名は、「被爆ピアノ」。
覚えておいてほしい。

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 インドのネコなんて知らないよ

インドのネコなんて知らないよ。
どんなところにいたってネコは可愛いに決まってる。
彼氏のサイファがインドに帰ったからって、さびしいことなんかないもん。

サイファがインドで何を食べてるか、ぜんぜん、気にならないもん。
インドのガンジス川で沐浴してるかどうかなんて、あたしには関係ないんだもん。

ネコって可愛いよね、名前をつけよう。
ガンジーってどうだろう、意志堅固そうだから。
サイファも頑固なところがあった。どのみちインドに帰るんだと言って、紅茶1つ淹れたことがない。

インドのネコなんて気にしない。あたしの知ってるサイファは ちょっと不器用で、でも優しくて いつも笑顔を絶やさない人だった。
その彼がいなくなっても やっぱり、あたしの生活は何も変わらない。
サイファがネコを飼おうとどうしようと、
あたしには関係ないんだもん。

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  春塵の衝撃波

  黒い衝撃波が襲い掛かる。
しかし、その瞬間、
――ガキィンッ! という甲高い音が鳴り響き、衝撃波は跡形もなく霧散した。
それは、アヴィスの振るった大剣から発せられた音だった。
そして、衝撃波をかき消したのは、彼の固有能力である防御の力によるものだ。
彼はその能力を使い、シェリアの魔法攻撃を防いだのだ。
多少なりともダメージを負ったらしく、アヴィスは苦悶の表情を浮かべていた。
それでも彼はすぐに態勢を立て直すと、今度はこちらに向かって駆け出してきた。
シェリアは再び無数の闇の矢を放つも、先程と同じように簡単に掻き消されてしまう。
アヴィスは春塵のように、距離を縮める。
あまりの速さに、シェリアは息を飲む。
「くらええぇぇっ!」
「穿てえぇぇっ!」
そんな叫び声と共に互いの魔法が衝突し、激しい爆発が巻き起こる。
シェリア、現在8点!」
審査員が点数を叫ぶ。
試合はいま、たけなわだ。

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 コップ注意報

 犯罪者にとってコップ(警官)ほど、やっかいなものはない。
こそ泥のケイタは、知りあいのマッドサイエンティストに、コップが近づいたら警報を鳴らしてくれるAIを開発してもらった。
題して、「コップ注意報」。

「あー、今日も平和だなぁ」
とケイタが言った瞬間、ピーンポーン! ピーンポーン! ピーンポーン! ピーンポーン! ピーンポーン! ピーンポーン! ピーンポーン! ピーンポーン! 
警報が鳴り渡った。
がちゃり。玄関がひらく。
その向こうに、めっちゃ可愛い女の子が立っていた。

「あなたをタイホしちゃうから☆」
彼女はそう言って、キスの雨を降らした。

彼女は警官だったが、ケイタに一目惚れしてしまったのである。
それ以来ケイタは、彼女の尻に敷かれ、
すっかり真人間になってしまった。

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 健康ダウンロード

「健康ダウンロードしたの?」
「う、うん。なんか色々あるみたいで……」
「へー、どんなのがあるのかな? ちょっと見せてよ」
「えっ!?」
有美さんが俺に身を寄せてきた。彼女の髪からシャンプーの香りがふわりと漂ってきて、俺は慌ててスマホを閉じようとする。だがそれより先に英人がスマホを奪い取ってしまった。
―――やばい。
俺は直感的にそう思った。
健康ダウンロードと称して、実はエロゲを入れていたからだ。 恐る恐る英人を見る。
しかしそこには軽蔑の色はなく、むしろ感心するような表情があった。
「へー、これが健康のもとか! 大人になるって意外と簡単だな!」
「サナギから脱皮するのが必要なのだ!」
俺が言うと、有美さんは、キラキラ目を輝かせた。
「そして、お湯で煮て、絹糸を取るのよね!」
「なんのこっちゃ?!」

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タイムスリップ太郎

 源氏に追われて洞穴の向こうに飛び込んだ太郎は、そこが兜率天ではないかと思った。
キラキラ輝く背の高い立方体や、ビュンビュン道を走る恐ろしい動物たち。
道を行く人々は、裸同然の恰好だ。
そこへ、追いつめられた太郎を救いに、 一頭の白馬に乗った女武者が現れた。
それは同じ平家だった。二人はたちまち恋に落ち、 太郎も、その美しい女武者に仕えるようになった。
ただひとつ、計算違いだったのは、
兜率天の天人たちがみな、ふたりをとらえ、
「ビョウイン」とかいう白い建物に閉じ込めてしまったことだった。

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 誰も知らない履歴書

 0歳誕生。両親、兄、妹の五人家族。
5歳までに両親は自分のもとを離れ、
兄と妹は親戚の家に育つ。
13歳までに兄、妹も別の場所へ。
しかししょっちゅう戻ってくる。

14歳。遙人は学園都市に入学。
そこで能力が開花するかに見えたが
いっこうにその兆しが見えない。
16歳で入学から二年経過。
ある日、遙人は学園を退学し その後三年間行方不明になる。
21歳になり、学園の同窓会で再会。
その後、学園都市にて再出発をはかる。
23歳になり、レベル5に至る。
現在25歳の春。

というキャラクター履歴書を書いてみたが
最近の流行に合わないということで、
ボツになってしまったのだった。

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 スベりATM

ギャグ銀行のスベりATMに、ボツになった
ギャグを投入するのが
売れない漫才師たちの
隠れた努力であった。

たとえば、このATMには、
こんなジョークが入っている。

「お姉さんの好きな羊羹を買ってきたよ。
せっかくだから、ようかんで食べてね」
一生懸命かんがえても、
ウケなかったらATMに投入である。

「お掃除ロボットを買ったのに、なんでそんなに熱心に掃除しているの?」
「だってロボットがモノにぶつかったり、糸くずが絡まったりしたら大変でしょ?」

ボツになったネタが、こんなふうになって戻ってくることもある。
ギャグ銀行は、今日も盛況だ。

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 全力で推したいガム

 「このガムは、1年間味が長持ちするガムです」
「でもそんなに長い間噛んでいたら、アゴが疲れちゃいますね」
「そうなんです。だから噛む暇も無く売ってるんです。このガムいかがですか?」
……という具合だ。しかしそれはそれで、商売として成り立っているのだろうか? それとも、ただ単に、そのお店の売り方が上手いだけなのだろうか? 
私は今、ガムを噛んでいる。昨日も一昨日も、ガムを噛んだ。そして今も噛んでいる。


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 君に贈る失恋

 ぼくのこと、忘れないで。
このわすれな草を贈るから。
わすれな草のやさしい花の言葉。
きみに贈るこの真心。
だれに心を奪われても
ぼくのこと、わすれないで。

空の影を映すような花の色
可憐な花のような君の笑顔……。

この詩はぼくの詩
きみに詩う詩、それは真実。
いつまでもぼくはきみを忘れない
これはぼくが君に贈る失恋だ。

※最初の投稿から1ヶ月以上経ちました。
 これで100個書いたことになりますので
 しばらくお休みさせていただきます。